不便さを楽しみながら、昔ながらの暮らしができるところへ移住

愛知県から川根本町へ移住 小泉さん
不便さを楽しみながら、昔ながらの暮らしができるところへ移住
新東名高速道路島田金谷ICから大井川沿いに北上すること約40分。榛原郡川根本町(はいばらぐんかわねほんちょう)は、町の約90%が森林というほど緑豊かな町です。接岨峡(せっそきょう)温泉、寸又峡(すまたきょう)温泉、千頭(せんず)温泉、白沢温泉といった4つの温泉と、長島ダム、大井川ダム、千頭ダム、大間ダム、寸又川ダム、境川ダムといった6つのダム、そして大井川があり、多くの水の恵みを感じることができます。町は、「水と森の番人が創る癒しの里 川根本町」を掲げ、豊かな自然資源はこの土地に暮らす人々のやさしい心も育んできました。
ここは、昔ながらの生活と、人々の日々の営みを感じることができる土地です。小泉香楠(こいずみかな)さんも、そんなのんびりとした暮らしをしたいという想いから移住を決意した一人。川根本町での暮らしについてお話を伺いました。

川根本町へ移住したきっかけを教えてください

愛知県で育ち、静岡市内の大学に進学しました。学生時代は、原付に乗って仲間と一緒に北海道から種子島まで全国各地を巡るなど旅好き。川根本町にも原付で来たことがあり、のどかでいいところだなぁと思っていました。大学4年生の時に、東日本大震災が起こりました。もし津波がきたら自分は何もできない。生きていく知識が何もない。そんな不安に襲われ、便利な都会暮らしより、少々不便でも昔ながらの暮らしをして生きる力を身につけたい。そう考えた時、将来暮らす場所として思いついた場所が、大学時代に訪れた川根本町でした。
当時、付き合っていた今の夫に「自分は大学を卒業したら、川根本町に移住するつもりだから」と伝えたところ、私の考えに共感してくれました。小学校の教員採用試験を受け、川根本町の小学校への配属を希望。無事、川根本町での仕事が見つかり、2012年、移住することになりました。
川根本町での生活はいかがですか?

夫は、もともと千葉に住んでいて、会社員をしながらオリエンテーリングの仕事をするパラレルキャリアでした。私が川根本町に移住することになった時、会社を辞め、オリエンテーリングの仕事で独立。今は、静岡県内各地をはじめ、愛知県や長野県などで仕事もあり、各地を飛び回っています。インターネットも光回線が通っているので、夫は、遠方の相手との会議をする時は、スカイプを使用しているようです。
私も小学校の教員をしていましたが、落ち着いて子育てをしたいと2018年3月に退職しました。今は、学校の寮のご飯づくりや、木工所の手伝い等をする仕事をパートタイマーで働いています。
私が住んでいる地区からスーパーや薬局までは、車で30分ほど。でも、自宅まで食材・日用品を宅配してくれるサービスを活用したり、大手通販サイトを利用したりしているので、特に不便は感じません。
川根本町での暮らしの楽しみ方を教えてください

ここに来てから、川のレジャーを楽しむようになりました。今夏は、娘もSUPデビュー。週1で行くほど、川遊びを満喫しました。川根本町には、1000円でSUP、カヌー、カヤック乗り放題になる体験会を実施する団体があり、初めてでも気軽に始められるんですよ。アウトドアが好きな方にはお勧めです。
他にも、味噌作りや梅干しづくり、梅ジュース、シソジュースづくりなど、手仕事を楽しむようになりました。味噌作りはハードルが高い印象がありますが、近くのカフェで味噌作りを教えてくれる講座があるので、初めてでも簡単に作れるんです。梅はお隣の家からおすそ分けしていただいたものを使っています。夫も、自分で梅酒をつけたり、庭で家庭菜園をはじめたりと、川根本町での暮らしを楽しんでいるようです。
また、地域行事にも積極的に参加させてもらっています。地元の方がいろいろ声をかけてくださり、先日も神楽(かぐら)で笛を担当させてもらいました。実は、笛は全く吹いたことがなかったんですが、何とかなりました(笑)。地域行事に参加する際は、娘は、おじいちゃんやおばあちゃんとたくさん遊んでもらい、その場の雰囲気を楽しんでいるようです。
移住を考えている方にアドバイスをお願いします

川根本町は、自然が多く、本当にのどかなところで、昔ながらの暮らしが今も多く残っています。近所を散歩すると、芋や梅を干している家があったり、近所の人が声をかけてくれたりと、本来あるべき暮らしを感じることができます。川根本町の人々は、話好きの方が多く、誰でも気軽に声をかけてくれます。移住者である私たちを快く迎え入れてくれたので、すぐに地域に溶け込めました。
私が移住を決めた当時は、まだ移住者向けの支援が充実していなかったので、川根本町役場に電話をし、家探しをしてくれるところを紹介してもらいました。今は、NPO団体である「エコティかわね」や「かわね来風(らいふ)」が移住者向けの支援を行っていて、移住の先輩方も多くいます。先輩からの話を聞くこともできるので、参考になると思いますよ。
私もまだ自分探し中です。生きる上では、正解も失敗もないと思います。子育てをしながら、暮らしの楽しみを見つけていきたいですね。