静岡市でタクシードライバーとして働きながら、観光の魅力を発信中

イギリスから静岡市へ移住 エヴィソンさん
静岡市でタクシードライバーとして働きながら、観光の魅力を発信中
「お茶のまち」として知られる静岡市。静岡のお茶は、鎌倉時代、静岡市生まれの聖一国師が中国からお茶の種を持ち帰り、静岡で育てたのが始まりと言われています。そして、静岡といえば地元の人に「家康公」として親しまれている徳川家康。彼も静岡のお茶を愛し、駿府の城下町に茶の取引をする専門の場所を設けるなど、静岡のお茶に深く関わった人物です。静岡市の各地には、お茶にまつわるエピソードが数多く残り、ゆかりの地を巡ってみるのもお勧めです。
イギリスから来日し、縁あって静岡市に移り住んだエリオット・エヴィソンさんは、現在タクシードライバーとして働いています。日本語も堪能で、静岡市の観光案内のほか、お茶に関する知識も豊富。「お茶のまち静岡市」のラッピングタクシーに乗ってお茶農家等を巡るタクシーツアーを行う認定ドライバーでもあります。静岡の人より静岡に詳しいエヴィソンさんに、外国人にとっても住みやすい静岡の魅力について伺いました。

イギリスからなぜ静岡市へ来たのですか?

12歳の頃からオートバイに関心があり、22歳の時、九州のオートバイレースを観るために来日しました。日本にはオートバイの4大メーカーがあり、オートバイ好きには憧れの場所でもあるんです。最初は1週間の日本滞在のつもりだったのですが、1週間では物足りなくて、ビザを延ばし、3か月滞在。大分や熊本などを巡り、レースに参加するなどしていました。結局、福岡で外国人のビザ申請のサポートなどをする仕事を見つけ、そのまま10年ほど福岡に住んでいました。ちなみに今はオートバイのレースは辞め、趣味程度に乗るだけです。
そして今から10年ほど前の40歳の頃、これまでとは違うことをやりたくて、環境を変えるなら東京かなと思い、東京で再就職。リムジンの運転手やSP(警護官)、通訳の仕事をしたり、ボクシングジムを立ち上げたりするなどしていました。ボクシングジムには100人ほどのクライアントがいたので、それなりに繁盛していたと思います。
そして、2015年に、東京の大学を卒業し東京で就職していた静岡市出身の妻と結婚。二人の子どもを授かりました。しかし、妻が「東京は子育てしづらい。静岡へ帰りたい」と言うようになり、2019年、会社を辞め、ボクシングジムは知人に引き継ぎ、静岡市へ引っ越してきました。
静岡市でタクシードライバーをすることになった経緯を教えてください

静岡市へ行く前にまずは仕事を探さないとと思い、東京・有楽町にある「静岡市移住支援センター」を訪れました。静岡市の担当者から、静岡の事情を教えてもらい、仕事もいろいろ紹介していただきました。面接もいくつか受けたのですが、なかなか自分に合う仕事が見つからない中、静岡市移住支援センターの紹介で「千代田タクシー」の代表取締役・加藤さんとお話しする機会をいただきました。静岡のタクシーは電話での依頼が多いとのこと。東京でリムジンの運転をしていた時は、特定のお客様を乗せる仕事でしたので、いわゆるタクシーの流し営業よりは安心して仕事ができそうと思いました。そして何より、加藤さんと何度もお会いし、家族でも会わせていただくなど、とてもよくしてもらいました。「千代田タクシー」でならと思い、就職を決めました。
就職後、イギリス出身のタクシードライバーがいるということで、新聞などのメディアでも取り上げていただき、そのおかげでお客様から指名をいただくことも多くなりました。「会えてよかった」と握手して下さる方も。嬉しいですね。清水港へ様々な客船が入港する関係から訪日客からの需要も多く、ツアー会社などから「英語ができるタクシードライバーを」という条件が付くことも多いです。ラグビーW杯の時は、イタリア、オーストラリア、カナダ、南アフリカなどからたくさんの訪日客が訪れたので、ネイティブスピーカーの存在は重宝されました。
何も知らなかった静岡市で、観光案内をするのは大変ではないですか?

20日間の研修でタクシードライバーとして必要な法律や規則などを学ぶのですが、その際に地理の研修もあります。静岡市は「流通通り」「北街道」など、通りに名前が付いているのですが、通りの名前や地名は比較的すぐ覚えられましたよ。ただ病院はなかなか覚えられなくて、苦労しています。
観光タクシーは、久能山東照宮や富士山がきれいに見える日本平、富士山世界文化遺産構成資産にもなっている三保松原などといった定番コースを回ります。徳川家康などの静岡の歴史にも興味があり、本やインターネットで調べたり、久能山東照宮の宮司さんにお話を聞いたりして知識を増やしています。静岡市を訪れた方に、家康の歴史などの魅力を伝えられたらと考えています。
最近、お茶農家や茶畑を巡ったり、お茶を楽しんだりする「お茶のまち静岡市タクシーツアー」の研修を終えたばかり。最近、お茶ジャンボタクシーを初めて運転させてもらうなど、活動の幅を拡大中。外国人観光客をはじめ、県外からの観光客の方にも好評をいただいています。静岡市を知るには観光タクシーを利用してみるのもよいと思いますよ。
静岡市の魅力はどんなところですか?

静岡市の人は人柄が本当にいいですね。道路を運転していて思いますが、道を譲ってくれますし、とても運転しやすいです。市内の至るところで富士山を観ることができるのも本当にいいですね。特に冬の富士山は美しい。温暖な気候も魅力の一つだと思います。
休日は、森町にある小國神社、大井川鐵道、各地のイルミネーション、掛川・袋井の紅葉など、家族で様々なところへ出かけます。自然が豊かで、出かけるところが豊富なのも魅力だと思います。
また、食文化も豊か。特に魚がおいしいですね。子どもたちも大好きなんですよ。生魚は苦手なのですが、静岡のマグロだけは生で食べられます。ブリを焼いたものも好きですね。
東京にいた頃は紅茶を飲むことが多かったのですが、静岡市に来てからはすっかり緑茶好きに。静岡の緑茶を飲んだら、他のお茶は飲めなくなるくらいおいしいと思っています。