海の近くで子育てしたい。松崎町を訪れてすぐに移住を決断

東京都から松崎町へ移住 高橋さん一家
海の近くで子育てしたい。松崎町を訪れてすぐに移住を決断
伊豆半島の南西部にある松崎町。黒潮が打ちよせる海岸は砂浜や岩礁など変化に富み、夕陽が沈む様(さま)は海の美しさをことさら引き立てます。温暖な気候で知られる静岡県ですが、風が強いところも多くあります。しかし、松崎町は北・東・南の三方を山々に囲まれ、西風が吹く冬季を除いては、風も穏やか。県内でも比較的過ごしやすい気候です。中心市街地は銀行やお店なども充実し、訪れてみると想像以上に栄えていると思うかもしれません。町内には幼稚園・保育園から小・中・高校まであるため、子育てしやすい場所でもあります。
東京・有楽町の「移住相談センター」を訪れた高橋さん一家は、相談員に薦められて訪れた松崎町が気に入り、移住を即決。高橋茂さんに、松崎町での暮らしの魅力や移住の際に苦労したことなどを伺いました。

松崎町への移住の経緯を教えてください

私たち夫妻はいずれも東京都の中でも自然が多く残る田舎の方の出身。結婚後も奥多摩近くの西多摩郡日の出町というところに住んでいました。山も川もあり、休日にはBBQを楽しむなどそれなりのアウトドア生活を楽しんではいたのですが、海がなく、毎年、ゴールデンウィークや夏には西伊豆まで釣りや海遊びに訪れていました。おかげで子ども達もすっかり海好きに育ちました。
やがて本格的に海の近くに住みたいと考えるようになり、2018年春、東京・有楽町の「移住相談センター」を訪れました。「伊豆に住みたい」という私たちに相談員さんが薦めてくれたのは、松崎町。高校まであるし、病院もあるから安心とのことでした。2018年夏、相談員さんから移住支援や田舎暮らし体験ツアー等を行っている「さとづくり総合研究所」の伊東さんをご紹介いただき、松崎町を訪問。先輩移住者でもある伊東さんに「身内も知り合いもいないのに、移住しても大丈夫ですか?」と相談してみたところ、「大丈夫だよ!」と言ってもらえました。この言葉が心強く、移住を決意するきっかけとなりました。
とはいえ、仕事も家もない状態。考えているうちに、2018年11月、双子の息子たちの入学通知が届きました。「もう迷っている暇はない。決めるなら今しかない」。2019年正月、再び松崎町を訪れ、少し山手の方にある古民家の借家を紹介してもらいました。リフォームしている場所もあり、状態も悪くなかったですし、ここに決めようと思いました。
移住で苦労したところ、驚いたところはどういうところですか?
苦労したのは、仕事探しですね。家を決めたものの、仕事はまだ決まっていなくて…。
2019年3月いっぱいで東京での仕事を退職し、4月に移住。それから、ハローワークへ通い始めました。すでに40代後半で、これまでずっと同じ職場で働いてきました。東京では仕事の選択肢はたくさんありましたが、こちらにはそんなに多くの選択肢はありません。下田市や河津町方面まで行けば、仕事もいろいろあったのですが、せっかく松崎町に移住してきたのだから、この近辺で探したいという思いがありました。
4月の終わりになり、ハローワークに紹介を受けた造船業の会社から採用通知をいただき、ひと安心。会社からは本当によくしていただいています。東京での暮らしは、仕事や慌ただしさなど、たくさんのストレスがありましたが、こちらへ移住してからはストレスがなくなりました。これも移住によって得られた利点の一つですね。
移住して驚いたのは、餅まき! 松崎町ではお祝い事があると餅まきが行われます。年何回か、家族で餅まきへ出かけていきます。また、「石部温泉大地曳き網まつり」、「雲見温泉海賊料理まつり」「雲見温泉サザエ狩り」などは、海鮮が無料でいただけることも。港町ならではの楽しみですね。
それからイノシシ、シカといった野生動物が多いのにもびっくりしました。以前、住んでいた東京の日の出町というところも、それなりに田舎で、時折、シカやイノシシに出逢うことはあったのですが、ここでは頻繁に遭遇します。クモも大きくて、驚きました。自然が豊かな分だけ、やはりムカデなどの虫は多いですね。
松崎町での子育てはいかがですか?

小学校は町内に1校しかなく、徒歩で行けないため、子どもたちはバスで通学しています。バス代は全額町が負担してくれていますし、他の子ども達もバス通学が多く、上級生や中学生が面倒を見てくれるため、安心して通わせられます。
妻は、今、松崎町近辺の食品業でパートとして仕事をしているため、学校が終わったら、子ども達は学童保育が入っている児童館へ通っています。ここでも上級生が面倒を見てくれていて、宿題が終わってから遊ぶというのが徹底されているみたいで、助かっています。夕方はだいたい17:30頃に迎えに行きます。
5月頃から秋にかけては、夕方、子ども達はそのまま海へ直行。「クラスで一番黒くなりたい」と言っている子ども達は、海でたっぷり遊びます。地元の子より、余程伊豆暮らしを満喫していると思いますよ。休日の日も朝8時や9時には水着に着替えて、海へ行きたいとねだられます。
東京にいる時は、妻も正社員として長く働いており、子ども達の保育園のお迎えも一番最後という生活でした。今はパートで働くくらいがのんびりしていてちょうどいいようです。
松崎町での暮らしの魅力と、これから移住を考えている方へメッセージをお願いします

ここでは、ご近所さんがいろいろな野菜や果物をくれるんです。初対面なのに野菜をもらったりすることもありますね。ミカンやポンカンの木に実がなっていれば「いつでも勝手に採っていっていいよ」と言ってくださいますし、魚も釣れたてをよくいただきます。こちらに来てから野菜や果物、魚はほとんど買ったことがないですね。お米や、手作りこんにゃく、お菓子、お惣菜、漬物、竹の子、イノシシ肉、シカ肉の刺身、時にはイセエビをいただくこともあります。我が家の食卓は貰い物ばかりですが、本当に豊かです。
子どもの学校行事に、夫婦がお互い仕事で行けない際には、ご近所さんが代わりに行って写真を撮ってきてくださったことも。雨が降っていれば、近所の方が洗濯物を取り込んでくれます。隣近所の人の顔は知らない方が生活しやすいという方には向かないかもしれませんが、我が家の場合は人が家に集まってくれる方が好きなので、今の生活はとても充実しています。いつか素泊まりの宿をできたらなぁといった漠然とした夢も持っています。
東京で暮らしていた時は、田舎とはいえ、コンビニも自動販売機も大きなショッピングモールもあったので、お金を使うところはたくさんありました。以前は、毎日缶コーヒーを買って仕事へ行くという生活をしていましたが、今は買うこともなくなりました。東京にいる時は、目に見えるものは、いいなと思ったら何でも買ってしまっていたのではないでしょうか。
私達は、何も用意がなく、知り合いも身内もいないのに、松崎町へ移住してきました。でも、それでも本当に毎日が楽しいですし、実際、移住してしまえば何とかなると実感しています。いろいろ考える前に、まずは行動した方がよいと思います。考えすぎてしまうと、躊躇(ちゅうちょ)してしまいますよ。