妻の実家が小山町で肉屋を営んでいたのですが、義父が病気で車を運転して配達することができなくなったため、家業を手伝うつもりで家族とともに移住しました。東京で暮らしていた時から起業をしたいという夢があり、経験を積むために衣料品メーカーやコーヒーチェーンで働いていたため、移住をきっかけに起業して新たな仕事に挑戦したいという思いもありました。そこで、家業を手伝いながら始めたのが、肉屋の空きスペースを使ったコーヒー豆の焙煎です。肉屋の仕事だけだと時間が余ってしまっていたので、これまでの仕事で培ったノウハウを活かして好きだったコーヒーに関わる仕事を立ち上げようと考えました。

副業として始めたコーヒー豆の焙煎ですが、現在は自家焙煎したコーヒー豆の販売とドリンクの提供が主な仕事となっています。店舗兼住宅を建設予定ですが、それまでは近くの喫茶店だった物件を仮店舗として、コーヒー豆の販売とドリンクの提供を行っています。焙煎した豆は個人に販売しているほか、近くの飲食店に卸したり、ドリップパックとして商品化したものを道の駅で販売したりしています。

また、この辺りは飲料メーカーが天然水としてペットボトルで販売するほど水質が良く、水道代も安いため、水が命のコーヒー店を営むには最適な環境なんです。
お店をオープンするにあたり、大切にしたのは地域の人に顔を覚えてもらうことでした。すれ違う人にちゃんと挨拶をするところから始めて、自分が何者なのかわかってもらうように努力しました。どこの誰がやっているお店なのかわからないと地元の方も不安でしょうから。また、地域の人に日常的にコーヒーを飲んでいただけるように、リーズナブルな価格に設定し、飲みやすくて飽きのこない味にすることを心がけています。お客さんからコーヒーの好みを聞くこともありますが、多くの人から酸味と苦味が少ない方が好きだという意見をいただきます。うちのお店では、酸味と苦味を抑えて果実味を引き出すように豆を焙煎しているので、その飲みやすさに驚かれることがあります。そういう時には、この仕事を始めて良かったと思いますね。

お店は水曜日と土曜日にお休みをいただいています。休みの日は必ず早朝ランニングすることを日課にしています。水曜日は妻が働きに出ていて子供も保育園に行っているので、一人で残った仕事を片付けたり、今後の仕事の計画を立てたり、サウナに行ってリラックスしたりしています。土曜日は家族と過ごすことが多いですね。近くに広くて綺麗に整備された公園がたくさんあるので、子供を遊ばせる場所には事欠きません。
起業したことで自分の裁量で時間を使えるようになり、家族とゆっくり過ごす時間が増えたことも、移住して良かったと思ったことの一つです。共働きなので妻に家計をサポートしてもらっている一方、自分の仕事を調整して子育てをフォローすることもできます。そうして家族がチームのように支え合う暮らしが私の理想でした。ただ、チームをうまく動かすためにぶつかり合うこともあります。妻とも息子とも面と向かって自分の意見を伝え合い、お互いに納得した上で先に進むことが大事だと考えていますから。相手を尊重するだけでなく、相手に遠慮しすぎないことも、家族というチームを成り立たせるために必要なことだと思います。

小山町は標高が高くて夏でも過ごしやすいのが嬉しいです。また、幼稚園と保育園を兼ねた認定こども園という施設が充実しており、待機児童はゼロなど、子育てをする環境も整っています。地元の方々と顔馴染みになっているので、息子を見守ってくれているような安心感もあります。さらに、小山町は生活の不便も感じません。大きなスーパーマーケットがすぐ近くにあり、車を20分走らせれば日本最大級のプレミアム・アウトレットがある御殿場にも出られるので大抵のものは揃います。
小山町に移住したことで家族との時間を増やしながら、起業という夢を叶えることもできました。多少の不安はありましたが、収入も人間関係もどうにかなるという気持ちでいれば、意外とどうにかなるものです。思い切って移住して環境を変えてみることで、解決する問題や叶えられる夢もあるのではないかと思います。